義理と人情の世界  

東映時代のスチール写真。左側・風間重吉役の池部良と、ヤクザの三下役・竹垣悟
東映時代のスチール写真。左側・風間重吉役の池部良と、ヤクザの三下役・竹垣悟

 ヤクザの心理を描くのは、三下奴(やっこ)から組長になった私が一番味わい深さを出せるのではないかと思いペンを執って居るのだが、宮本武蔵の五輪書のように「人生の指南書」を書くような訳には行かない。

 

 今の時代ヤクザ社会に夢や希望がある訳ではなく、大体がサラリーマン化されつつあるように思うのだが・・・

 昔のヤクザは青い着物を着て監獄に行くか、白い着物を着て地獄に行くか、ふたつにひとつだと云われて来た。

 

 普段から擬似家族で成り立って居る分、権力の弾圧に弱く、暴力団社会に大義がなくなった時、その虚構は壊れやすくなる。

 ヤクザにとって冬の時代が到来した今、時代は巡り最後は哀れで悲しいものになるのだ。

 

 それでもヤクザになりたい者が、跡を絶たないと云うのはどうしたものだろう・・・

 

 ヤクザならまだしも、暴力団と国から指定されるのは良くない。

 

 国から指定されると云うのは暴力団側にも責任があるのだ。

 そこの所を考えて暴力団組織を運営して行かなければ、日本の国から「義理」も「人情」も廃(すた)れて行くような気がする。

 

 私はヤクザ社会にこそ、義理や人情の世界が残って居ると思うからだ。

 

 私の持論だが、男でも女でも惚れた相手の為なら命を賭けるが、嫌(いや)な奴の為に命を賭ける程お人好しも今では居ないだろう・・・

 これは世の中の流れがそうなって来たのだ。

 

 東映映画の世界ではないが、渡世の義理に命を賭けても儚いものだと云うのが、最近のヤクザは「過去の事例を見て来て」良く分かりだしたのだ。

 

 結果、誰もが暴力団組織の為に命を削る事がしんどくなった。

 

 私の場合それで堅気になったと云えば語幣があるが「結果」あとで考えれば、そう云う事になるのだろう・・・

 

 暴力団員だった者が堅気になった場合、第一に会費の心配をする事が無くなり、一般的に時間に縛られる事も無く、自由闊達に生きられるので男としての責任感と云うか、肩の荷が下りてかなり自由になる。

 

 それで私は暴力団時代には出来なかった色んな資格や免許を取ったりした。

 そしてボランティア活動にも積極的に参加するようになった・・・

 

 ・・・現役時代、義竜会と云う自分の率いる組織の為に、私は自己を犠牲にして来たが、それはそれで良かったと思って居る。  

 良くも悪くも自分で責任を取れたからだ。

 

 ・・・だから古川真澄が引退した時、私は胸を張って堅気になった。

  

 そんな私がいま、世間から横を向かれて居る暴力団相手に更生を促して居るのである。

 

 一人で何も出来ないから徒党を組んで居るのが人間社会なのだが、反社会的集団は感心しない。

 ・・・組織を良い方向に向けて行くのも悪い方向に向けて行くのも統率者次第である。

 要は、この世の中は、世の為・人の為になる団体に軍配をあげるようになって居るのだ。

 

 田岡一雄三代目組長が生前賞めて居たのは、赤軍派と云われた左翼の重信房子達である。

 

 気分の高揚感で激高するのではなく、静かに自分の信念に基づいて行動を起こす確信犯が立派だと云って居たそうだ。

 

 そう云えば田岡一雄のブレーンのひとりに左から右に転向した田中清玄が居る。

 これらの人と麻薬追放国土浄化同盟を結成したが、その時のメンバーに参議院議員で社会党の市川房枝も居る。

 

 今、麻薬・覚醒剤が社会問題になって居ると聞く。

 

 一度、覚醒剤の魔力に虜(と)り込まれたら中々抜け出せないと云うが、これが実情だろう・・・

 覚醒剤の中毒者に聞いた話しだが、覚醒剤を止めるには覚醒剤関係の友人と手を切る事が一番大事だと云う・・・

 

 覚醒剤を打つ人間は意志が弱いから、警察に捕まっても直ぐ土産話しを置いて来る。

 だからポン中と云われる人間は人から信用されずチンコロの仕合いで、次から次へとイモヅル式に逮捕されて行くのだ。

 

 覚醒剤担当刑事と云うのは、通称Sと呼ばれるスパイを何人か持って居るそうだ。

 だから最終的にポン中は、無間地獄のように刑務所と娑婆を行ったり来たりするのである。

 

 私はポン中と云われる人間を色々見て来たが、何をさせてもルーズになる。

 薬物欲しさに人を裏切ったり、盗みを働く者さえ居るからだ。

 

 そんな事を考えれば、暴力団組織に所属して居る方が薬物をする回数も少なくなり、物事を少しでもきちんと出来るのだが・・・

 これはむずかしい問題だ。

 

 麻薬追放と云うのは難しい問題だが、これも現代社会が生んだ歪(ゆが)みなのかも知れない。

 

 山口組が先頭に立って、三代目田岡一雄組長時代のように「麻薬追放国土浄化同盟」を是非再興してもらいたいものだ。

 

 それが社会に貢献出来るヤクザ社会のひとつの方法ではないだろうか・・・

 

 侠道精神に則り、麻薬追放を我が祖国日本の為に是非遣り遂げてもらいたいものである。

 

 

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コメント: 1
  • #1

    大阪 川島 (火曜日, 08 10月 2013 21:36)

    会長、前回と今回のブログ拝見しました。感じたことは最近、お陰様でと言う言葉を聞かなくなったなと思います。今は何か自分がすることで見返りを求める風潮になっているなと。前回の話でも周りの協力あってお陰で今日があると思えば良かったのかなと思いました。確かに意地は大事ですが生かされているという気持ちを持てば状況はかわったのかなと感じます。おそらく三代目が目指されたのは一人の力は小さいけど多くの仲間が集まり互いに補い助け合う、それが自然と出来る組織のように思います。このような気持ちがなくなっているヤクザ社会が今の世の中の縮図のようで勝ち組負け組という言葉は悲しくなります。私の座右の銘は忍です。信念を持ち続けることでいつかわかってもらえる、それを信じ我慢することが大事だと思います。きっといつか三代目が掲げた祈りが通じる日があると思います。お忙しいとは存じますがお身体には十二分に気をつけてください。