誰かが先陣を切って、世の中の歪みを正して行くのが悠久の大義であり、国家繁栄の源(みなもと)になるのだが、そんな志(こころざし)を持った人間が近頃は、めっきり減った。
ましてや日本最大の暴力団・山口組に対して公然と「暴力団は侠客になれ」と云い切れるのは、今のところ我々五仁會ぐらいのものだろう・・・
私は自慢ではないが、それぐらい強い者には敢然と立ち向かっても、弱い者いじめはした事がない男なのだ。
こんな事を云ってはなんだが、今の暴力団も私のような侠気と、おおらかな気持ちで極道をして来たなら、世の中がもっと暴力団に対して寛容になっていたはずだ。
日本古来より続く侠道精神を継承し、自分の背中を見せて若者を育てようと思うなら、俗に云う暴力団の語源となる、集団で徒党を組んでの行動は余り誉められたものではない。
男一匹、何事にも屈せず「腕と度胸」で世の中の悪に立ち向かって行かなければ一人前の男とは云わないのである。
そうすることによって、汝(なんじ)を玉にするとは、むかしの人が云って来た言葉だ。
最近は、暴力団の末路と云うものの哀れさが、ほとんどの暴力団に理解され始めた。
・・・去る3月14日に、五代目山口組若頭・宅見勝射殺事件の犯人のひとり、財津晴敏に無期懲役の判決が下りた。
16年間の逃亡生活の末に逮捕され、これからまだ長い刑務所暮らしが待っているのである。
私は財津晴敏のことを考えると、ヤクザの儚さと哀れさが一層引き出され、その純真さゆえに悲しみが増すのである。
財津は誰からも好かれる良い男だった。
そんな良い男だけに、事の良し悪しは分かっていても、暴力団の一員として大義なき戦いに参加しなければならなかったのだ。
好む、好まざるに拘らず、参加しないと中野会組員としての極道生命が絶たれてしまうからである。
事件を起こして刑期を無事務めて出所しても、その組が解散して無くなっていたというのでは、いくら男気を出して行った懲役もしんどいものになる。
今の時代、長い懲役に行って帰って来て良い思いをしたというのは、ほとんど聞かない。
ヤクザ社会の義理や人情も、紙風船の如く軽くなってしまったようだ。
だから、私は丁度良い時機に堅気になれたと思う・・・
私が極道として駆け出しの頃、自分が持った親分に喜んでもらいたい一心で、親分の顔色を窺い行動して来た。
しかし今は、男心に男が惚れて盃を受けると云うようなヤクザの基本が脇に追いやられて、事務的に盃を受ける相手を山口組本部の指示で決められているのが現状だ。
惚れてもいない親分に、白を黒だと云われても「ハイ、そうです」と素直にうなずけないのは当然の話しである。
そもそも事務的に盃を交わすこと自体、仁侠道の真髄から大きく離脱しているのだ。
尊敬も出来ない兄貴分や親分の為に、忠誠を尽くせと云うのも無理な話しである。
・・・山口組も平成9年の中野会絶縁以来、三代目山健組が中野会の受け皿として振り分け役となった。
結果、中野会の者に良いメシを喰わせない為に、弱小の山口組傘下へ中野会組員を行かせたのが、侠道精神の崩壊につながったと私は見ている。
五代目山口組内に於いて、山健組と共に我が世の春を謳歌して来た中野会組員が、穏健派の組に行けば当然シノギは山健組に行くようになる。
それを率先して采配して来たのが、三代目山健組の当時三役クラスの者たちである。
この三役クラスの者は現在山健組には在籍してないが、そんな不条理な采配をして来た者に、人としての幸せは訪れないだろう・・・
男とは、どんな立場に在っても公明正大に審判を下して行かなければ、奢(おご)る平家久しからずとなるのである。
その点、四代目山口組を継いだ竹中正久と云う親分は、公明正大を絵に描いたような極道だった。
もちろん男が一旦、吐いた唾は飲み込まない人だった。
私は、そういう男として立派な親分の許で所作を見習い、ヤクザとしての自覚と誇りを磨いて来たつもりだ。
私が竹中正久より教えられた男としての生き様を、このブログを通じて前途ある若者に伝えて行ければ、これほど幸せなことはない・・・
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伊達直人 (月曜日, 17 3月 2014 21:18)
会長、ご無沙汰しております。
お変わりありませんか?
少し前に本の出版は諦めたとおっしゃってからのブログはキレが出た様に思います。
特に最近の話題は、現役ヤクザの方達には耳が痛い所だと思いますし、末端の方達の声を代弁しているとも思えて痛快です。
これからも、色々と世間に当たり前の事を知らしめて下さいませ。
タイガーマスク (火曜日, 18 3月 2014 08:56)
数年前まで現役のヤクザの世界に身を置いていた竹垣会長が、今のヤクザ社会を批判する事に誹謗中傷等は多々あると思いますが、会長は信じる道をブレる事なく突き進み、今後とも今のヤクザ社会の悲哀や現実を広く知らしめて一人でも多くの人を更正の道に導かれる事を願ってやみません。
頑張って下さい。
木下正浩 (火曜日, 18 3月 2014 20:51)
竹垣悟様
はじめまして山梨県で農家を志しております木下正浩と申します。
27歳独身、手に職も学歴もなく農業経験はおろか植物の栽培じたい小1の朝顔以来でした。
荒ぶる獅子を読んで涙した暗い引きこもり時代から任侠道、侠客というのはどういう人の事を言うのか学んで生きたいと思っております。
溝口敦氏の著作集を読んでいかに四代目親分が魅力ある人物だったのか、また伝えられないヤクザ社会の実像に凄く興味があります。実際に四代目親分に身近で接してこられた会長のお話をインターネットで見れる時代にワクワクしております。
四代目親分とはどういうお方だったのか、その後のヤクザ社会の動向を会長の生の声を楽しく拝見させて頂いております。内気な小心者ですが大親分が好きで日本国の魅力だとも思うのです。親分と思う83歳の人物に農業を見習い百姓としての自覚と誇りを磨いていきたいと勇気を持って投稿させていただきます。
ありがとうございました。
二階利陸 (土曜日, 22 3月 2014 17:17)
活動ご苦労様です。
暴力団更生法法案に賛成します。
暴力団からの離脱者、解散組織に対しての社会に役立つ為の更生法があれば、日本国の国家繁栄に繋がり、その志を胸に抱く侠客の卵が生まれて来ることを確信致します。
そして、現役の暴力団と言われている組織は、暴力団と言う名称を返上する努力をしなければならないでしょう。
外国人による犯罪組織の排除や食い止め活動をして、本来的な弱いものを助け、強いものを挫く精神を心の中心に捉え、この日本国を守る精神を宿し、日本男児の武士道を貫き、何事にも全力を尽くす強い精神を探求し、本当に意義ある侠客精神を持って活動しておれば、世間の目も変わって行くのではと思います。